源兵衛さんの赤ちゃん

(Genbê-san-no-Akachan)
作詞者:不詳 /アメリカ民謡 
英訳:山岸勝榮
©

Genbe-san's Baby
Lryics: Unknown / American Folk Song
English Translation: YAMAGISHI, Katsuei
©


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こちらにYouTube版の歌唱があります。
こちら
にmp3の音源があります。
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1.
源兵衛
(げんべえ)さんの赤ちゃんが風邪ひいた
お医者があわててとんで来た
それでもなおらぬ赤ちゃんは
なかなか泣きやまない
オギャーオギャー よくないね
オギャーオギャー うるさいね
それでもなおらぬ赤ちゃんは
なかなか泣きやまない
オギャーオギャー よくないね
オギャーオギャー うるさいね
それでもなおらぬ赤ちゃんは
なかなか泣きやまない



2.
源兵衛さんの赤ちゃんが熱出した
風邪だか腹だかわからない
お医者はオペチョをなぜながら
首をかしげていた
オギャーオギャー よくないね
オギャーオギャー うるさいね
それでもなおらぬ赤ちゃんは
なかなか泣きやまない

オギャーオギャー よくないね
オギャーオギャー うるさいね
それでもなおらぬ赤ちゃんは
なかなか泣きやまない






1.
Genbe-san's baby caught a cold
The doctor got panicky and flew to help the baby
But the baby didn't get well soon
And he wouldn’t stop crying
Wah-wah, wah-wah, he feels bad
Wah-wah, wah-wah, he's too noisy
But the baby didn't get well soon
And he wouldn't stop crying
Wah-wah, wah-wah, he feels bad
Wah-wah, wah-wah, he's too noisy
But the baby didn't get well soon
And he wouldn't stop crying



2.
Genbe-san's baby ran a fever
Nobody knows he caught a cold or a tummyache
The doctor wondered and tilted his head
Rubbing gently the baby's belly button
Wah-wah, wah-wah, he feels bad
Wah-wah, wah-wah, he's too noisy
But the baby didn't get well soon
And he wouldn't stop crying
Wah-wah, wah-wah, he feels bad
Wah-wah, wah-wah, he's too noisy
But the baby didn't get well soon
And he wouldn't stop crying

.

無断引用・使用厳禁 
Copyrighted
©
この歌に著作権はありません。



以下の文章は私のゼミの特修生で大学院博士前期課程1年生の大塚孝一君と3年生の草皆高広君の手になるものです。
興味深い比較ですので、両君の了解を得て、転載します。

ゼミ生の皆さん

山岸教授が「源兵衛さんの赤ちゃん」をお訳しになりました。御訳を拝読し、以下に感じたことを書いていきます。

《リズム》
 この度の「源兵衛さんの赤ちゃん」は弾むようなテンポが印象的です。山岸教授の御訳は各連の2行目は他の行に比べて若干長くはありますが、リズムに乗せて歌うことができます。テンポについては、「汽車」を課題曲として英訳したときに、そのテンポの速さに訳詞を乗せていくことの難しさを実感しています。この歌も「汽車」同様の小気味の良さから、原詞の難易度は高くはないものの、訳出に苦労する原詞だと思われます。個人的にBut the baby didn't get well soon / And he wouldn't stop cryingの箇所は歌っていて非常に気持ちがいいものです。

《生きた英語》
 山岸教授の御訳は、生きた英語に満ちあふれた御訳ということが言えます。御訳を分析し、「翻訳論」としても学ぶこともできますが、御訳から直接日常表現を学ぶこともできます。例えば、catch a cold, get well, feels bad, run a fever, などは、体調面を表現するために日常生活でよく用いられる表現です。もし私が英語教員であれば、山岸教授の御訳から、catch a coldとhave a coldの違い、get wellからget betterへの“変化”、さらにget+形容詞の語法、feel + 形容詞の語法、run a feverとhave a feverの違いなどに触れます。場合に寄っては、辞書で上述の質問を解決させてもいいかもしれません。
 他にはtummyacheという語から英語にも「幼児語」があることを学習者に教えることもできます。現在はインターネットがありますから、容易に幼児語が載っているインターネットサイトを見つけることができます。また、幼児がI goedなどと誤った言い方をしながら正しい英語を身に付けていくことを学習者に知らせれば、「正しくなくてはいけない」という英語に対する意識が変わり、肩の荷が多少なりともおりるかもしれません。

《訳出の難しさ》
 先ほど《リズム》の項で「原詞の難易度は高くはないものの」と書きましたが、だからと言って実践できるとは限りません。例えば第1連では、2行目のgot panickyやflew to、4行目のwouldn'tは、私たちゼミ特修生では、容易に思いつくような表現ではないと思います。日ごろから多くの英語に触れ、貯金を増やしていくことが必要だと感じます。

平成26[2014]年
 1月30日
   大塚 孝一



ゼミ生の皆さん
 先生の「源兵衛さんの赤ちゃん」に関するスレッドやブログ上でのお言葉を読み、先生の仰る「『源兵衛さんの赤ちゃん』を自分で“訳す”ことが出来なければなりません。他人の批評は誰にでもできることです。しかし、自分でそれをできる人が一番の批評者なのです。」 このお言葉が強く心に残ります。私達はもっと自分自身の産み出すひとつひとつの訳を他人の視点で厳しく批評し自ら納得のいくものにし得ない限りこと英語に関しては伸びていかないことを強く実感します。その視点で先生の英訳の素晴らしさを分析しますと

兵衛(げんべえ)さんの赤ちゃんが風邪ひいた
お医者があわててとんで来た
Genbe-san's baby caught a cold
The doctor got panicky and flew to help the baby

 この箇所は私でしたら「風邪をひいた」は"have a cold"にするでしょうし「あわてて」は「fluster」等を用いると思います。ですが先生の英訳を読み更に辞書を調べてみると"catch" には「動いているものを捕まえる」という意味があるためまさに「空中を浮遊している病原菌を捕まえてしまった」という意味あいを「catch a cold」とする表現は赤ちゃんが風邪をひいた状況を表すのにぴったりです。そしてpanickには語源より「原義はパン神(Pan)の。狼狽はパン神が突然現れるためであると考えられることから」の意味合いが根底にありやはり「突然」の慌てふためく様子を適切に表しています。ここから私自身が活用のため学ぶことはやはりこの唄は「大変活発な動き」を示しておりそれぞれ言葉の中に動きを内包する"catch"や"panicky"といった言葉によりその動きを明確に示せる、この様な言葉選びを出来るように学ぶということでしょう。

オギャーオギャー よくないね
オギャーオギャー うるさいね
Wah-wah, wah-wah, he feels bad
Wah-wah, wah-wah, he's too noisy

 この"Wah"という表現は子供の泣き声である"waugh(え〜ん)"という表現の短縮形です。これをハイフンでつなげそれを繰り返すことで赤ちゃんの泣き声を聴いているようなイメージが出てきます。こういう表現は絵本や漫画の吹き出し部分を学ぶことで少しずつ表せるようになる部分だと思います。翻訳のためにはそういった学習も必要であるということでしょう。その後には"he feels bad"そして"he's too noisy"という言葉が続きますが私は原曲を聴いてこの唄を見ているので赤ちゃんの泣き声の後の人々のヒソヒソ声が描かれている原曲のこの部分の可笑しさが先生の英訳ではとても効果的に表現されていると実感します。特に赤ちゃんをheと表すのはある意味とても高度な表現と言えます。ここはこの唄で最もユーモラスな箇所なのです。もう一度この部分を見て見ますが

Wah-wah, wah-wah, he feels bad
Wah-wah, wah-wah, he's too noisy

 なんと絶妙な言葉選びでしょうか。こういった単純かつユーモラスな表現を的確に表現出来ることこそ英米人の目からも英語がわかる人に見える部分なのでしょう。

 今回これら二つの箇所を取り上げさせて頂きましたが翻訳家を目指すには英日変換の過程でより汎用性があり且つ特定の状況にぴったりあう表現を的確に産み出す力を求めるしかないと強く実感しています。

平成26[2014]年
 1月30日
    草皆 高広